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2021/07/09
今注目の投資戦略
新型コロナ禍でもノルウェー政府年金基金の運用は高リターン

<新型コロナ禍でもノルウェー政府年金基金の運用は高リターン>

新型コロナウイルス感染症が世界的大流行(パンデミック)となり、歴史的な波乱の年となった2020年――。しかし厳しい環境下でも、北欧で世界最大級ソブリン・ウェルス・ファンドを運営しているノルウェー銀行(中央銀行)傘下の投資管理部門(NBIM)は、ハイテク株投資などの寄与により、2桁のトータル・リターン(総収益率)をたたき出したようだ。

ノルウェー銀行投資管理部門(NBIM)が運用しているソブリン・ウェルス・ファンド「ノルウェー政府年金基金グローバル」は、2020年(12月31日時点)のリターンが10.9%、1兆0700億クローネに達した。6月14日時点で1ノルウェー・クローネ=13円程度。

リターンの詳細は、ベンチマーク指数の株式部分が11.7%、株式投資が12.1%、ベンチマーク指数の債券部分が6.8%、債券投資が7.5%、非上場不動産投資がマイナス0.1%だった。

2019年(ベンチマーク指数の株式部分25.7%、株式投資26.0%、ベンチマーク指数の債券部分7.4%、債券投資7.6%、非上場不動産投資6.8%、トータル・リターン20.0%)に比べると鈍化したものの、新型コロナウイルスの影響を勘案すれば健闘したと言えるだろう。

NBIMが2021年2月25日に発表した2020年の年次報告によると、「新型コロナウイルス発生・感染拡大は、全ての人々に経済的な影響を及ぼした。パンデミックは、2020年1-3月期に金融市場に衝撃を与えた後、4-6月期には急速に回復した。2020年は高いボラティリティー(変動率)と業種によって非常に異なる変化をもたらした。世界経済成長は打撃を受けたものの、ファンドの株式投資は12.1%のリターンを達成した。特にハイテク株が41.9%以上のリターンとなり、力強く貢献した」という。

ノルウェー政府が1996年5月に初めてファンドへ資本を移管した後、2020年末までに合計で3兆0920億クローネのリターンを受け取った。1998年1月1日から2020年末までで年率6.3%、累積6兆4270億クローネのリターンを生み出した。純年率リターンは4.4%だった。

<運用残高、25年間に20億クローネから11兆クローネへ拡大>

駐日ノルウェー大使館によると、ノルウェー政府が北海油田から得る石油収入の長期運用のための財政手段として、1990年にファンドが設立され、国民のために財務省が所有し、財務省に代わってNBIMが運用している。

2006年に「政府年金基金グローバル」と改名されるまで、「石油基金」と呼ばれていた。改名は、将来予想される公的年金コストの増加に備えて政府収入を貯蓄するという役割を反映したものだが、基金には公式の年金債務はなく、将来の年金コストを賄うために、いつ基金を使うかについての政治的決断もまだなされていない。

NBIMは、株式、債券(国債・社債など公社債)、不動産、再生可能エネルギーなどのインフラといった分野に、73カ国、9123社へ投資している。アップル、ネスレ、マイクロソフト、サムスンなど国際的な大手企業へ投資し、平均して世界の全上場企業株式の1.4%を保有している。

2020年末時点のポートフォリオの市場価値は72カ国で合計10兆9137億6806万1832クローネ(約130兆円)に上った。株式が7兆9454億7452万0317クローネ(69カ国、9123社)と全体の72.8%を占めた。債券が2兆6951億8435万6458クローネ(45カ国、1245債)と24.7%、不動産は2731億0918万5057クローネ(14カ国、867物件)と2.5%だった。

NBIMは、政府年金基金のほか、外貨準備を運用している。世界中に分散投資しており、日本も資産運用の対象となっている。

当時の財務相シグビョルン・ジョンセン氏が1996年5月30日に初めて政府資金20億クローネを「石油基金」へ移管して以来、25周年となる2021年には運用残高が約11兆クローネに達している。

スヴェイン・ジェドレム元総裁は2021年5月31日、25周年記念のウェビナーで設立の経緯、財政ルール、ノルウェー経済への意義などを説明した。

投資対象企業の監視・除外指針には、基本的人道主義に反する兵器(クラスター爆弾や核兵器など)を製造している企業には投資しないと定められている。倫理委員会が、各企業への投資が指針に沿っているか評価を行ない、委員会の勧告に基づき、財務省は基金の投資対象からの企業の除外に関する決定を行う。

当初は「石油基金」として始まったにもかかわらず、近年は石油・ガス関連株を投資先から外す方針を打ち出すなど、持続可能な社会を目指し、ESG(環境・社会・企業統治)投資でも存在感を高めている。

参考文献:
The fund (nbim.no)
ノルウェー政府年金基金グローバル - Norway in Japan

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