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2023/05/18
今注目の投資戦略
ポルシェ、ロレックス、ダイヤ・金、PEファンド:危機に備えた資産構築とは?

<ポルシェ、ロレックス、ダイヤ・金、PEファンド:危機に備えた資産構築とは?>

「備えあれば憂いなし」――。資産保全というと富裕層向けの話だと思いがちだが、人生100年時代には、だれにでも予想外の危機が訪れるものだ。様々な危機に備えた資産を構築するには、どうすれば良いのだろうか?

歴史を振り返っても、金融危機、国家の破たん、戦争・革命のほか、預金封鎖・ペイオフ、迫害・差別、天災、疫病、スタグフレーション、食料不足など、色々な危機が身近に起こり得る。市場の暴落、金融機関・企業の倒産、景気後退などに伴い、リストラ・失業、収入・貯蓄の減少、資産売却、病気など、リスクを事前に考慮しておくことは、将来への不安や懸念が増大し、負の連鎖に陥ることを防ぐ上で重要だ。

通常の不況時には、「キャッシュ・イズ・キング(現金は王様)」と言われ、現金は最強とみられることが多い。しかし、国・地域、民族、時代、社会・経済・政治情勢などによって対応策は異なるだろう。

例えばギリシャで2009年頃に起きた経済・財政の破たん危機だが、同国ではドイツの高級車ポルシェ保有率が世界トップクラスだと報じられた。国家破たんとインフレ急伸に対する国民の防衛策の1つとなっているのだろう。

当時、英国金融大手バークレイズ証券の外債チーフストラテジストは、ギリシャに関して、ラテン民族の楽観的な気質からか、借金踏み倒しに心理的な抵抗が小さく、歴史上、何度も債務危機を経験していると指摘。資金の借り手よりも、むしろ貸し手の責任を挙げていた。(つまりギリシャに金を貸した方が悪いという見解だった。)

また中東やアフリカなどのテロ・紛争地帯へ向かう記者やカメラマン、医者などは、だれもが知っているロレックスなど高級時計を身に着けるようだ。万一、襲撃を受け、拘束された際に、身を守るための交渉材料として利用できるからだ。高級時計を狙われて襲われれば、本末転倒だが、いざという時に換金性の高いものを差し出して、命乞いができるという。リセールバリューが高いブランド品は、世界中の多くの人々から普遍的な価値を認められているため、取引が成立しやすい。

一方、ユダヤ人は、歴史的に様々な国・地域で迫害を受け追放された経験を持つ。このため、簡単に持って逃げることができるダイヤモンドや金などを扱う貴金属業界に従事している人が多い。米国ニューヨークのミッドタウンに位置するダイヤモンド街では宝石店が並び、ユダヤ教超正統派が黒づくめの服装で闊歩している。同時にユダヤ人は、他人や国から奪われることがない高等教育へ積極的に投資を行い、金融業界や研究機関・大学などで働く人も多い。

また金は、一般的に「有事の金」と呼ばれ、危機に強い資産とみられている。今年に入り、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金価格は過去最高値を更新している。中国やインドなどでは、富の象徴として金の需要が強く、金消費国1位の中国、2位のインドの2カ国で2021年の年間世界金生産量の約半分を買い受けたと報じられた。

金価格の推移.png

さらに世界中で中華街などを展開している華僑は、ビジネス・商売を通じて団結しているが、本土の中国共産党が土地の私有を認めず国有地のためか、海外では不動産投資が顕著なようだ。

不測の事態が起きた場合に備え、多種多様な投資先を勘案し、高値でいつでも換金できる普遍的な価値を持つ資産を構築することは、精神的・身体的な安心安全をもたらすのではないだろうか。

<海外プライベート・エクイティ(PE)・ファンド>

こうした実物資産・知的財産などと同様に、海外プライベート・エクイティ(PE)・ファンドも、資産防衛の有効な選択肢となるかもしれない。

経済・産業・社会の停滞感が強まっている日本では、長期的に少子高齢化が進み、平均賃金は過去30年間上がっていない。収入・所得が増えない中で、インフレが広範に進行しており、個人の力ではどうしようもない状況になりつつある。

厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が4月に公表した2070年までの日本の将来人口推計によると、2020年に1億2615万人だった総人口は、2056年に1億人を割り、2070年に現状から3割減の8700万人に落ち込む見通しだ。総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は2020年の28.6%から2070年には38.7%へ上昇する見込み。さらに50年後の合計特殊出生率は1.36と、2017年の前回推計(1.44)から低下すると予想されている。

日本の2070年人口ピラミッド推計

国立社会保障・人口問題研究所.png

出所:「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(国立社会保障・人口問題研究所ホームページ)

米実業家イーロン・マスク氏は2022年、「当たり前のことだけど、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう」とツイッターに投稿し警鐘を鳴らした。

日本で労働者・消費者人口が減少する流れが変わらなければ、日本に住んでいる限り、国内の潮流に逆らうことは難しいだろう。長期展望を踏まえ、最悪の事態を想定して、平時に準備を怠らなければ、いざという時の生活防衛へとつながる。

米国では、2000年代のITバブル崩壊、リーマンショックなど、最近では、新型コロナ・ウイルス禍、米銀シリコンバレーバンク、シグネチャーバンク、ファースト・リパブリック・バンクの相次ぐ破たんなど、大きな混乱が発生してきた。しかし混乱を乗り越え、危機の後には、成長力の高い新たな産業・技術革新が次々と生まれている。

代表格はGAFAMと呼ばれるIT大手5社(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)や電気自動車テスラなどで、世界時価総額ランキング上位に成長している。足元ではオープン人工知能(AI)を活用したチャットGTPなども台頭している。

海外の未上場企業へ投資することは、日本の長期停滞という危機を回避するだけでなく、新興企業が大企業へと変貌する機会を捉えて、明るい未来への種をまくことにもつながるだろう。

参考文献:
「金」先物価格 最高値更新 米銀行の相次ぐ経営破綻受け | NHK
なぜギリシャはポルシェ保有率世界一なのか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
世間を騒がせた「ギリシャ危機」の今 | EU経済最前線 (wingimp.org)
イーロン・マスク氏「日本存在しなくなる」投稿の真意は!? (tv-asahi.co.jp)
ロシア産金の輸入禁止、中国・インド・中東が抜け穴か - 日本経済新聞 (nikkei.com)
国立社会保障・人口問題研究所 (ipss.go.jp)

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