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2022/11/17
今注目の投資戦略
プライベート・エクイティ(PE)・ファンド投資:なぜセカンダリー(流通)市場が魅力的か?―物価高に対抗し長期的な資産構築の支えに―  

<プライベート・エクイティ(PE)・ファンド投資:なぜセカンダリー(流通)市場が魅力的か?>
―物価高に対抗し長期的な資産構築の支えに―

世界的に原材料などを中心に物価高が進行し、主要国中央銀行による金融引き締め政策が続いている。家計・企業の負担は増大し、現金は価値が下落していくため、対抗策を講じる必要があるだろう。

PEファンド投資で乗数効果に期待>

収入・賃金の拡大が容易に望めず、経費削減による支出抑制にも限界がある局面では、投資における乗数効果を意識することが解決策となるかもしれない。乗数効果とは、投資の伸びに対して、所得や需要などの拡大が、乗数(掛け算)的な伸びとなることを意味する。つまり足し算、引き算の計算式から掛け算、割り算の計算式に移行するようなものだ。

未公開株などへ主に投資するプライベート・エクイティ(PE)・ファンドは、乗数効果を体現できる投資のひとつと言えるだろう。PEファンドは、未公開企業の株式を出資の形で取得し、資金提供や経営関与により企業価値を高めながら、株価が十分に上昇した段階で売却してキャピタルゲイン(値上がり益)を獲得する。新規株式上場(IPO)や買収・合併(MA)などを通じたエグジット(資金回収)戦略により、海外PEファンドの中には、年率2桁のリターン(投資収益)をたたき出すようなものも存在する。

米系大手ではベインキャピタル、アポロ・グローバル・マネジメント、欧州系大手ではペルミラ・アドバイザーズなどが有名だ。日系ではソフトバンク・グループのベンチャー・キャピタル・ファンド(VCファンド)なども含まれる。

出資のタイミングには、①設立時に全額を出資する、②予め定められたスケジュールで分割して出資する、③ファンドから求められた段階で出資する(キャピタル・コール)の3種類がある。キャピタル・コールは、資金の無駄な滞留を防ぐことを目的とし、通常は投資家のコミットメント額(出資約束金額)に応じて按分して行われる。

特にプライマリー(新規)投資においては、投資期間の初期段階でリターンがマイナスになる傾向、いわゆる「Jカーブ」に注意する必要がある。コミットメントが実際に投資されるまでに数年間かかることがあり、分配金や投資ポートフォリオ売却といった形でリターンが実現する前でも、運用報酬など様々な手数料がかかることから、新規参入者は何年間もマイナスのリターンや低リターンに直面する可能性が高い。

いずれ投資の段階が進み、純資産価値(NAV)が上昇し、収益が実現するにつれて、「Jカーブ」もプラスに転じることになるが、初期段階では投資家はマイナスのリターンにさらされることになるため、「Jカーブ」をできるだけ解消し、投資結果を改善させることが重要だ。

こうした「Jカーブ」を緩和する手法のひとつとして、セカンダリー(流通)市場で取引されるPEファンドに投資し、ポートフォリオの構成を最適化・多様化することが挙げられる。

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<なぜセカンダリー市場でPEファンド投資か?>

セカンダリー市場で既存PEファンドの持分を購入する場合、運用会社、戦略、地域、業種、ビンテージ・イヤー(投資資本が最初に流入した年)などの分散を図ることができるほか、投資先が決まっていないリスクを回避し、投資対象の透明性を確保できるため、PEファンド投資を開始・強化して、リスクを低減する上で効果的だ。

また割り引かれた純資産価値で既存ファンドの持分を購入することにより、プライマリー投資よりもセカンダリー投資の方が早期のキャッシュフローを実現しやすい。当初の投資家・出資者が支払う報酬・手数料などの大部分を回避し、早めの分配開始により「Jカーブ」を緩和することができる。さらに、キャッシュ保有比率を下げ、投資効率の向上も期待できるだろう。

投資ライフサイクルの途中で参入することで、①当初のパフォーマンス低下を軽減・マイナス幅を低減、②マイナス・リターン期間を短縮化しプラス・リターンに転じるまでの時期を早期化、③初期段階の「Jカーブ」を解消して資金の早期回収につなげるーーなど魅力的な特徴を持つ。

セカンダリー市場は、PEファンド運用会社で経営に無限責任を負う、ゼネラル・パートナー(GP)が持分を売却・現金化する需要に対応できる。同時に、有限責任の下でGP出資後の残りの部分を拠出する投資家であるリミテッド・パートナー(LP)にとっても、独自にアクセスが困難な優良ファンドへの投資機会を得るといった、多様な潜在的需要にも応えることができる。

GPはPEファンドの組成、投資実行、回収・分配、清算まで業務の管理・運営を行い、管理報酬・成功報酬などを受領する。一方、LPGPに資金の運用を委託する投資家という位置付けだ。

運用過程においては、①PEファンドの投資家・出資者、仲介機関、その他市場関係者とのネットワークを活用し未公開市場へアクセス、②専門家による包括的なポートフォリオ・財務諸表の査定・分析・評価、③割安価格での取引交渉・入札、④投資候補先企業の照会・訪問・調査、⑤経営・法的・税務面の検討――などを経て投資判断に至る。

<長期的なPEファンド投資は家計・企業の資産構築の支えに>

国際金融市場では、物価高騰を背景に金利が上昇傾向を強めており、家計・企業は先行きの景気悪化を警戒している。

米連邦準備制度理事会(FRB)は11月に4会合連続で政策金利を0.75%ポイント引き上げ、3.754.00%とし、積極的な利上げを継続した。パウエル議長は会見で、今後の利上げ幅の縮小を示唆したものの、政策金利のピーク水準は従来の想定よりも高くなる可能性があるとの見解を示した。

一方、国内では、総務省が発表した9月の全国消費者物価(CPI)総合指数は前年同月比3.0%上昇と、8月(同3.0%上昇)に続き、20149月以来、8年ぶりの高い伸び率が続いている。

ドル・円相場と消費者物価指数(CPI)画像.png

PEファンド投資は、一般的に値動きが大きく、流動性が低いなど、ハイリスク・ハイリターンのイメージが強い。しかし家計・企業が、株式・債券など伝統的な資産から市場と相関の低い資産にポートフォリオを多様化し、リスク管理を強化することにより、長期にわたる良好な資産構築と運用成績を目指す上で強力な支えとなるだろう。

参考文献:
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント | プライベート・エクイティ・セカンダリー・ファンド投資戦略 (morganstanley.com)
プライベート・エクイティにおけるJカーブ効果の削減 (mercer.co.jp)
「Jカーブ」の平準化 | Russell Investments
ヘッジファンド、2021年はPE投資に救われる-来年も同じ戦略か - Bloomberg

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