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2022/01/21
今注目の投資戦略
イベント・ドリブン型ファンドの収益機会

<イベント・ドリブン型ヘッジ・ファンドの収益機会>

企業もリサイクルできる時代――。

新型コロナ・ウイルスの世界的大流行(パンデミック)を背景に、ヘッジ・ファンド業界では、企業の買収・合併(M&A)戦略やディストレスト(経営破綻・破綻懸念企業への投資)戦略などが活発化している。

ヘッジ・ファンド・リサーチ(HFR)社の発表によると、2021年通年のHFRI500ファンド加重総合指数(FWC)は10.3%上昇となり、前年の11.8%上昇に続き、暦年としては2009年以来で3番目の高パフォーマンスとなった。

このうちイベント・ドリブン戦略は、2021年通年で13.1%上昇となり、2009年以来の高パフォーマンスだった。特にアクティビズム戦略が寄与した。この戦略は、M&A観測や、株価が割安に放置されているがカタリスト(起爆要因)の創出により企業価値の改善が見込まれる株式への投資などに焦点を当てる。

HFRXグローバル・ヘッジ・ファンド指数の推移

HFRXグローバル・ヘッジ・ファンド指数チャート.png

(出所:QUICK

HFRのケネス・J・ハインツ社長は、「株式ヘッジ、イベント・ドリブン、商品などの高ベータ戦略が主導して、ヘッジ・ファンドは2021年12月に好調となり、堅調なパフォーマンスで過去2年間を終えた。世界的な新型コロナ・ウイルスのパンデミックと検疫が始まって以来の極端なボラティリティ(変動率)と市場波乱をうまく乗り越えることができた」と説明した。

2022年も、新たな変異種オミクロン株の出現や都市封鎖(ロックダウン)など行動制限・対策による影響が、様々な業界において敗者と勝者を生み出すと予想される。観光・航空・宿泊業界などへ打撃を与える半面、ハイテク・オンライン業界や医薬品業界などへは追い風になる可能性がある。

こうした中、企業価値の最大化を目指して、株式公開買付(TOB)による友好的/敵対的買収、株主提案とプロキシー・ファイト(株主総会での委任状争奪戦)、書簡・面談・対話、キャンペーン・報道、資本構成・経営体制の変革、ポイズン・ピル(毒薬条項)など防衛策といった話題が市場を賑わせる流れは、今後も変わらないと見込まれる。

海外では2021年に米マイクロソフト共同創業者ビル・ゲイツ氏によるフォーシーズンズホテル・チェーン取得、ハンガリー格安航空会社ウィズエアーが英競合イージージェットへの買収提案を拒否されたほか、欧州の投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズによるスペインのサッカーリーグへの出資報道と混乱などが伝えられた。

また投資家から、英国企業の中には、新型コロナと英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の両方の打撃を受け、魅力的な価値という印象を持たれているものが多く、M&A取引が2015年以来の高水準に近づいている。

日本国内でも、米投資ファンドのベインキャピタルが1月14日、大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツの全株式を米投資ファンドのローン・スター・グループに売却すると発表した。

一方、新型コロナによる流通網の混乱がサプライチェーンの問題を引き起こしており、自動車など一部大手製造業では、サプライヤー(部品供給企業)を買収する流れにもつながっている。

<イベント・ドリブン型ヘッジ・ファンドの勢いは2022年も続く見通し>

これまでの世界的な低金利環境や金融機関による緩和的な融資姿勢は、ヘッジ・ファンドや企業によるM&A資金調達を容易にしてきた。

また一部の企業・投資家は、2007―2008年の米国サブプライムローンとリーマン・ショックによる金融危機後、レバレッジ(借り入れ)を大幅に削減した結果、強固なバランスシート(貸借対照表)を維持しており、株式交換によるM&Aの場合、自社株式を有効に活用することができるようになった。

さらに最近ではヘッジ・ファンドにとって、特別買収目的会社(SPAC)への投資は良好な選択肢ともなっている。

2022年もこうした環境は続き、イベント・ドリブン型のヘッジ・ファンドがアルファ(超過収益)を追求する流れは続くだろう。企業再生を目指すM&Aやディストレスト、およびアクティビズム戦略の勢いが継続する公算が高いと見込まれている。

参照:
HFRI GAINS TO CONCLUDE STRONG 2021 | HFR®
ニュース | Bain Capital
ビル・ゲイツ氏、フォーシーズンズ経営権取得-サウジ王子持ち分買収 - Bloomberg
イージージェット、格安航空他社の買収打診を拒否-20億ドル調達へ - Bloomberg
スペインサッカー1部リーグ、CVCが32億ドル出資へ | ロイター (reuters.com)
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