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2023/02/28
名門ヘッジ・ファンド会社紹介
シタデル

2022年に最も輝かしい実績を残したヘッジ・ファンド、シタデルは30年以上にわたって着実に運用資産や事業規模を拡大、実績を積み重ね、複数の賞を受賞するに至った米国の最大手ヘッジ・ファンドのひとつである。

シタデル(創業当初は別の社名)は、創業者であるケネス・C・グリフィンが雑誌フォーブスの転換社債型新株予約権付社債(Convertible Bond:CB)の取引が開始されるという記事に触発されて、1990年にハーバード大学の寮の部屋で取引を開始し、大きな利益を出したことが始まりであった。グリフィンはLCHインベストメンツが発表したヘッジ・ファンド・マネジャー・ランキングで、2021年はブリッジウォーターのレイ・ダリオに次ぐ2位に躍進するまでになり、2022年についに1位となり、ヘッジ・ファンド業界でだれもが注目するトップ・ランナーの1人となった。

新型コロナ・ウイルスのパンデミック(世界的大流行)やシカゴの犯罪率の高さなどを背景に、2022年にグローバル本社をシカゴからフロリダ州マイアミへ移転。世界7か国16拠点にオフィスを構え、2600人以上の従業員が働いている。創業以来、たびたび"Best Workplace"としてランキングされるなど、業績以外の面での受賞も多い。従業員の報酬も高いが要求も高いことで有名。経営破たん後のメリルリンチから優秀な人材を引き抜いたり、エンロンが破たんした際には同社の人材を雇い入れてエネルギー投資を始めたりしたように、危機に瀕した金融機関やライバルなどから新しい人材や事業の取り込みを積極的に行って、規模を拡大、または安定化させてきたというグリフィンの意欲的な姿勢が会社をトップ・ランナーにまで押し上げてきた。

2023年2月時点でフォームADVに提出されている運用資産残高(AUM)は約253億米ドル。旗艦ファンドのひとつは2021年の運用成績がプラス26%、2022年はプラス38.1%と非常に高く、ブルームバーグは世界のマルチ・ストラテジー・ヘッジ・ファンドの中で"最も優れたリターンを出したファンド"だと報じた。2022年にInstitutional Investorが発表した"Hedge Fund Award"ではマルチ・ストラテジー・ヘッジ・ファンド部門で最上位となった。大賞を受賞したのは実に5度目で、世界でもトップ・クラスのヘッジ・ファンドであると言える。

投資戦略は、マルチ・ストラテジー。創業当初は当時のヘッジ・ファンド業界で主流の戦略でもあった、いわゆる転換社債アービトラージ(正式には転換社債型新株予約権付社債、Convertible Bond:CBを用いた裁定手法)や債券アービトラージ戦略が主な運用戦略で、大きな利益を生んだ。しかし、運用資産規模が拡大するに従って戦略も多様化し、株式、債券、クレジット、グローバル・マクロ戦略、クオンツ運用など多くのチームを形成、マルチ・ストラテジー・ファンドへと運用戦略を変化させた。

多くのファンドを運営しているが、その中で旗艦ファンドは2つ。

  • Citadel Wellington
    米国の投資家向け。1990年運用開始。
    2022年の運用成績はプラス38.1%。ヘッジ・ファンドの中で史上最大の単年度利益を計上(LCHインベストメンツの推定)。
    運用開始以来、マイナスを記録した年は数えるほどしかなく、安定したリターンをあげている。
  • Citadel Kensington Global Strategies
    米国以外の投資家向け。1995年運用開始。
    運用成績は2008年に大きく損失を出したが、その後20%台を記録するまでに回復。300を超える投資家が資金を預けている。

特筆すべきは、グリフィンは現在、ヘッジ・ファンドであるシタデルを運営しているだけでなく、シタデル・セキュリティーズという米国株式市場におけるマーケット・メイカーを経営しているということである。2006年から業務に注力し、大きな取引シェアを得るまでに成長した。ニューヨーク証券取引所の最大のマーケット・メイカーで2021年、2022年と過去最高益を更新し続けている。2022年8月末には東京にオフィスを開設し、日本の投資家向けにサービスを開始すると発表した。

時に"墓場のダンサー(Grave Dancer)"と揶揄(やゆ)されるほど、金融危機などの度にそれを好機と捉え、M&A(買収・合併)などにより事業を拡大したり、新規分野への参入を果たしたりと積極的に事業拡大を行うことでトップ・ヘッジ・ファンドへ成長させてきたグリフィンが、今後も長期にわたって、業界のトップ・ランナーでいられるのか、成長を続けることができるのか注目に値するヘッジ・ファンドである。

参考資料:

(文責:客員アナリスト 鈴木)

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