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2022/12/08
名門ヘッジ・ファンド会社紹介
D.E.ショー

"クオンツ運用のパイオニア"として知られる、D.E.ショーは、コンピューター・サイエンスの知識を背景に複雑な数学的モデルを運用に用いる世界最大級のヘッジ・ファンドである。

米国、ニューヨークを主拠点に1988年にデービッド・エリオット・ショーがわずか6人の従業員と始めたヘッジ・ファンドは、現在では拠点は世界中に広がり、運用資産を伸ばし、瞬く間にトップ・クラスのヘッジ・ファンドの地位を確立した。D.E.ショー・グループが公表している2022年9月時点での運用資産残高(AUM)600億米ドル以上。2000人以上の従業員の中で、数学者、科学者、コンピューター・プログラマーをはじめ、様々な言語、多様なバックグラウンドを持った人々が在籍している。国際数学オリンピックのメダル保有者が多く迎えられており、D.E.ショーの特徴を顕著に表している。また、Amazon創業前のジェフ・ベゾスが働いていたことでも知られている。

投資戦略は、現在最も人気が高まっている戦略のひとつである、マルチ・ストラテジー。D.E.ショー・グループが30年以上にわたって洗練させてきた高度なコンピューター・プログラムなどの従来のクオンツ運用に用いられるシステマティックな投資戦略だけでなく、各分野の専門家によるファンダメンタルズ分析などをファンド・マネジャーはじめとするチームで複合的に判断し、より運用実績を向上させ続けている。

旗艦ファンドの運用実績は202019.4%202118.5%と好調で、ブルームバーグ資料によれば、2021年のマルチ・ストラテジー・ファンドの中でも第2位の好実績であった。創業当初は転換社債アービトラージ戦略で運用実績を上げてきたが、大きな損失を出したことを機に、様々な戦略に分散投資するように移行。2000年代からはプライベート・エクイティ(PE)戦略でも実績を伸ばしている。2013年に新規の資金の受け入れを停止したが、2020年には一部再開したと報じられた。

代表的な運用ファンドは、旗艦ファンドである "Composite fund""Oculus fund"。いずれも新規の投資を受け入れていない。また他にも多様なヘッジ・ファンド商品があり、それぞれに多額の資金を集めている。

  • Composite Fund
    2001年運用開始。開始以来の運用実績はおよそ12%。グループ最大の運用規模で、あらゆる地域や資産クラスへの投資を行うD.E.ショーの代表的なマルチ・ストラテジーのヘッジ・ファンド。
  • Oculus Fund
    2004年運用開始。開始以来の運用実績はおよそ12.5%(いちどもマイナス運用なし)。2番目の運用規模で、マクロ指向のマルチ・ストラテジーに基づくヘッジ・ファンド。

長期にわたり運用状況が2桁と好調なD.E.ショーだが、一方で、管理手数料や運用報酬が高いことで有名である。ヘッジ・ファンドの手数料は"2 and 20"という料金体系、つまり管理手数料を年間に2%、運用報酬(パフォーマンス費用)20%が一般的だと言われている。しかし、世界的な新型コロナ・ウイルスの感染拡大による市場の混乱をはじめとするヘッジ・ファンド業界全体の運用成績不振により、顧客がより安い手数料による運用会社を探す動きが広まる中で、D.E.ショーの旗艦ファンド2つの手数料体系は、2.5%/25%または3%/30%と高水準である。2022年10月には、2023年7月から旗艦ファンドの2つの成功報酬をさらに引き上げ、2.5%/30%または3%/35%、運用ファンドの一部では最大40%まで引き上げる(管理手数料は変更されない)と報じられている。しかしながら、高額な手数料を要求してもなお資金が流入する特筆すべきヘッジ・ファンドであると言える。

参考資料:

(文責:客員アナリスト 鈴木)

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